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【イベントレポート】「CIRCULAR STARTUP TOKYO」第2期キックオフ!ナカダイ、鎌倉投信の講義と全16チームのピッチ

2024年12月1日

サーキュラーエコノミーメディアプラットフォーム「Circular Economy Hub」を運営するハーチ株式会社と東京都との協働により実施される、サーキュラーエコノミー領域に特化したスタートアップ企業の創業支援プログラム「CIRCULAR STARTUP TOKYO(サーキュラースタートアップ東京)」第2期が、2024年11月14日にキックオフを迎えました。

キックオフイベントで行われた、サーキュラービジネスを実践する有識者からのインプットトーク、参加者からのビジョンや事業計画のピッチについてレポートします。

インプットトーク

最初に株式会社ナカダイホールディングス(以下、ナカダイホールディングス) 代表取締役の中台澄之氏から、「廃棄物処理業とサーキュラーエコノミー」というテーマで、事業を通してサーキュラーエコノミーに取り組む際に抑えておくべき考え方や廃棄物処理に関わる法律についてお話がありました。

ナカダイホールディングスは、「不要なものを必要な人や企業につなぐこと」を掲げ、すでに出てしまった廃棄物の処理やリユース・リサイクル事業を行う株式会社ナカダイと、そもそもの廃棄物の量を減らすことを目指し、循環型に移行したい企業へのアドバイザリーやコンサルティング事業を行う株式会社モノファクトリーの両輪で事業を進めています。

株式会社ナカダイホールディングス 代表取締役 中台 澄之 氏

株式会社ナカダイホールディングス 代表取締役 中台 澄之 氏

中台氏はまず始めに、サーキュラーエコノミーの全体像について解説しました。

「資源循環を含むサーキュラーエコノミーは、脱炭素社会を目指すための省エネや再生可能エネルギー利用、サステナブルな社会を作る自然共生や地域社会への取り組みと共に包括的に提供することでこそ、地域やお客さんのウェルビーイングな状態を作ることができると考えています。この3つはそれぞれがつながっているため、資源循環やサーキュラーエコノミーと直接的には関係がないと感じても、意識する必要があるのです」

サーキュラーエコノミーの両輪を表す図

そのうえで、サーキュラービジネスの展開には、廃棄物処理法の基本的な知識を持っておくことが不可欠だと話しました。

「既存の廃棄物処理法では企業が自社の廃棄物をまずは自社で処理することを求めており、それができない場合に初めて廃棄物処理業者に頼むという選択肢が出てきます。その際、廃棄物処理の許可を持っていない業者に処理を委託した場合は、罰金や懲役を受けることになります。これは、絶対に違反してはいけない道路交通法と同じだとイメージすると良いでしょう。サーキュラーエコノミーに取り組もうとするのであれば、こうしたことをしっかり頭に入れたうえでビジネスを構築する必要があります」

さらに、2024年5月に環境省が公布した「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」について、サーキュラーエコノミーを大きく広げる可能性があるものとして紹介しました。

「不要なものを必要な人に繋ごうとすると、ほとんどの場合は正式な許可が必要な廃棄物処理のプロセスを踏む必要があります。しかし、これから循環型社会を拡大していこうと考えたときに、既存の廃棄物処理業者がそれを全て担うことはできないでしょう。

そこで環境省が今年5月に発表したのが、『資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律』です。これは、一定量以上の資源循環を行えるのであれば、廃棄物処理業の許可を持っていない事業者にも、廃棄物処理を許可するという法律です。これにより、廃棄物処理が全産業に広がっていくと考えられます」

最後に中台氏は、「サーキュラーエコノミーの実現には、最終製品の提供のために組まれた『産業サプライチェーン』ではなく、業界を超えて連携する『資源循環サプライチェーン』が必要だと考えています」と強調しました。

参加者の様子

続いて、鎌倉投信株式会社(以下、鎌倉投信)の江口耕三氏から、「リニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ苦難の道にようこそ!」というテーマで、投資家とのコミュニケーションの仕方や、これから事業を作っていくうえで必要な心構えについての話がありました。

鎌倉投信は、「いい会社へ投資する」という理念を掲げる投資信託で、主に上場企業の株式を対象とした公募型の投資信託「結い2101(ゆいにいいちぜろいち)」や、これからの社会を創発するスタートアップを対象にした「創発の莟(つぼみ)ファンド」を運営・販売しています。

江口氏は、最初にサーキュラーエコノミーを実現する難しさに触れ、参加者を激励しました。

「まず、これまで数百年間リニア型だったものを循環型に変えていくのは、とても難しいことです。循環型で良いものを作っても、より安い代替品を買ってしまうなど、生活者の行動変容を起こすのは難しく、そうした中で事業として売り上げをあげていかなければいけないわけです。

そうした時に意識して欲しいのが、変えたい現実や人に対してNOと言うのではなく、『こっちの方が良くないですか?』と常に『問いかける』こと。そして、簡単には変わらない現実も、現実としてきちんと受け入れること。そこから、どうすれば良いのかを考えていく。これをみなさんにやっていただきたいと考えています」

江口耕三氏

鎌倉投信株式会社・創発の莟ファンド運用責任者 江口 耕三 氏

そのうえで、今後参加者が大きな資金調達を行う際に出会う機関投資家について、彼らの考えていることや、話題にしていることについてお話しいただきました。

「事業の時価総額が500億円になった時に皆さんが出会うのが、機関投資家です。彼らは最初は倒すべきラスボスのように見えるかもしれませんが、一度投資をすると一気に味方になってくれる存在でもあります。お金だけではなく、世界中の企業を紹介してくれますし、情報もデータも提供してくれる。ですから、起業家は何としても彼らを味方にしていかないといけません。

では、彼らは何を考えているのでしょうか。機関投資家は、人々から預かった年金を数十年後に返すために長期の目線を持ってる必要があるため、常に50年、100年先を見据えてバックキャスティングをしています。

そうした中で今彼らが注目しているのが、『気候変動』と『サーキュラーエコノミー』です。気候変動は人間の手に負えないリスクになりつつありますから、彼らは今、企業や政府に気候変動を抑制するためのさまざまな規制をかけていっています。

そして、その解決策となり得るサーキュラーエコノミーが、機関投資家の中で非常にホットトピックになっています。欧州ではすでに大きな波が起こり、その波がこれからの3年〜5年で日本に押し寄せて来る。だから、皆さんがサーキュラーエコノミーをやろうとしている今は、とても良いタイミングなのではないかなと思います」

では、機関投資家は起業家をどのような視点で見ているのでしょうか。

「彼らが最も知りたいのは、起業家が『これから高い山をどうやって登るのか』です。つまり、起業家がこれからぶつかる障壁や制約をどのように乗り越えるのかということですね。

高い山を登るには、あなたやあなたの会社にしかない強みが必要です。自分たちの強みを聞かれて、パッと答えられますか?なかったら、今日から作りましょう。強みには例えば、人や技術、ノウハウといったリソースや、ブランディングや立ち位置といったポジショニングなどさまざまなものがありますが、大事なのはナンバーワンになれるオンリーワンを作ることです。

そのうえで、強みをどう表現したら周りに伝わるのかもよく考えましょう。業界のカオスマップやトレンド予測図を使うなど、方法は色々あります」

「また、最終的に壁を乗り越えられるかどうかは、実行力にかかっています。投資家は、1度話した起業家が、4か月経ったときにどう進化しているのかを見ています。

ですから、これからこのプログラムを通して投資家から言われるさまざまなことを、酸いも甘いも全部吸収して欲しいと思います。聞きたくなかったことも言われると思いますが、グッと堪えてそこを考え抜いて欲しい。

また、その中で大事なのが、創造的仮説を立てることです。投資家からもらった意見の中からピンとくるようなものに対してできるだけ多くの仮説を立てて、リスクを取って実行できるかどうかが大事です」

江口氏は最後に、「まずは投資家を、ビジネスやプロダクトのファンにすること。ファンになってくれれば、もう仲間だからです。これは、顧客を増やすプロセスと全く同じです」と締めくくりました。

講義後は、参加者から講師2名への質疑応答が行われました。自身の事業と関わる部分や、今後に生かしたい内容についての質問を受け、参加者の強い熱意を感じます。

参加者からのピッチ

中台氏と江口氏からのトークの後は、CIRCULAR STARTUP TOKYO参加者からのピッチが行われました。それぞれが自社のビジョンや強み、ビジネスモデルなどを3分間で紹介しました。以下に各社の発表を簡単に紹介します。(※敬称略)

参加コースA:スケールアップ&資金調達・IPO準備コース

清水 雅士/マイクロバイオファクトリー株式会社

「廃棄物のサーキュラー事業化」というミッションを掲げ、デニム業界における廃棄物の増加やEU廃棄禁止法令への対応を始めとする課題を解決をするため、デニムの工場で発生する廃繊維からインジゴ染料を回収して再度、染料として利用する技術開発に取り組んでいます。CSTを通じて持続可能なビジネスモデルの構築や事業拡大のための資金調達に繋げていければと考えており、将来的には海外展開を目指しています。

平間 亮太/株式会社4Nature

食の未来を守る地産地消プラットフォーム「neoharu」、有機野菜を中心としたこだわりある農家を対象に、「地産地消プラットフォームの構築」を進め、有機野菜に限らずこだわりある農家さんを対象に既存の農業のサプライチェーンからの転換を目指して活動しています。「CSA(Community Supported Agriculture)ループ」の事業拡大、リブランディングができればと思いCSTに参加いたしました。

鶴崎 祐大・朴 旻/株式会社Seafood

テクノロジーを活用した、仲介業者を必要としない漁業のマッチングサービスを提供しており、水産業の課題解決に取り組んでいます。CSTを通じて事業推進にさらなる弾みをつけ、資源循環型モデルの確立を図り、持続可能な水産業の実現を目指してまいります。

中村 周太/株式会社Circloop

「サステナビリティをあたりまえに」をミッションに、オフィスやコワーキングスペースといった働く空間向けにリユーザブルカップサービスを展開しています。容器のリユースが企業にとって大きなソリューションとなるものの、日本では普及していないという課題に対して、カップの洗浄・配送・回収をフルサービスで行い、使い捨てと変わらない気軽さ、体験で環境貢献ができるサービスを提供します。CSTを通じて資源循環の更なる加速を実現していきます。

荒 裕太・原田 雄司/株式会社Ripples

フィルムを剥がすことできれいな状態で容器を回収することができる、水平リサイクル可能なプラスチック容器を使った取り組みを行っています。プラスチックポジティブな取り組みを通じ、障がい者雇用、こども食堂への持続可能な寄付モデル構築など、環境・福祉・防災・教育を軸に社会へ貢献していきます。

坪沼 敬広・野田 英恵/合同会社渋谷肥料

渋谷を「消費の終着点」から「新しい循環の出発点」にシフトできないか?という問いを掲げ、都市を起点としたサーキュラーエコノミーのモデルを実装しています。CSTを通じて事業のスケールアップの可能性を見出し、渋谷から東京、そして様々な地域にブランドストーリーを展開することで、中核都市とその周辺地域を結ぶ仕組みの構築を目指します。

参加コースB:社会インパクト創出&事業基盤構築コース

須藤 簡子/ブルーバード

障害のある方々の雇用機会を作りたいという思いと、サーキュラーエコノミー分野での貢献をしていきたいという2軸があり、CSTに参加することになりました。サーキュラーエコノミーに社会全体で取り組むために、家事代行サービス業という立場から個人に関わり、家事代行業が個人の意識を変えていくという挑戦ができればと思っております。

八神 実優/株式会社Gaiapost

生分解性の幼児用オムツを開発し、使用済みのオムツを焼却ではなく堆肥化し、畑の土にして野菜や果物を育てるという循環に取り組んでおります。使用済みの紙オムツはし尿を含むと約4倍の重さになり、素材と排泄物の分離など、リサイクルが難しく、このようなものが一般廃棄物の約5%を占めているといった課題があります。ビジネスモデルとしてはステークホルダーをいかに繋いで循環を作れるかという点が鍵であり、地方自治体と一緒に実験を積み重ねながら広げて行きたいと考えています。

磯部 宙/Next Newman Networks 株式会社

ファッション産業のサーキュラーエコノミーを実現するため、サステナブルファッションを社会に浸透させるソリューションの開発に取り組んでいます。サステナブル製品の購入やシェアリングが可能なプラットフォームを構築し、サーキュラーエコノミーへの行動変容を促します。購入顧客はリファービッシュ(製品を再生・修復する仕組み)を通じて、製品をできるだけ長く使えるようにし、また、購入した製品をユーザー同士でシェアし、その後再びリファービッシュすることで、製品の寿命をさらに延ばす仕組みを考えています。このような循環型の利用を実現するプラットフォームを構築したいと考えています。

守田 篤史・和田 由里子/株式会社ペーパーパレード

デザイン業界が消費を促すを見られている現状に課題を感じ、デザインファームとして、都市型サーキュラーデザインやパッケージブランディングを事業として提案型のビジネスを行っています。屋外広告は素材としての耐久性に優れ再生の可能性があるにも関わらず、知的財産権の問題によってそのほとんどが廃棄されてきました。知財を隠すシークレット地紋を施すことで権利の問題を解決し、街とファッションを繋いで、廃棄されゆく屋外広告にまち由来の素材という新たな価値を提案していきたいです。

王 振江/株式会社東芝

AIの力で粗大ごみのリユースを促進するため、リリース可否の自動判定機能付きの受付システムを使い、粗大ごみを削減できるプラットフォームを構築したいと思います。削減したゴミに成果報酬料を付与するサブスク形式を検討しており、自治体と協議を進めたいと考えています。デジタル化を通じて、サーキュラーエコノミー・カーボンニュートラルの実現に貢献できるよう事業を進めて行きます。CSTを通じて、サーキュラーエコノミーを目指している仲間とともに、循環経済の実現に貢献します。

長末 雅慎/有限会社GMGコーポレーション

「藻類」を活用し、CO2削減、藻類タンパク質の利用、堆肥化を通じた循環型農業の実現、藻類オイルを使った化粧品原料の開発などを進め、サーキュラーエコノミーの実現を通じて社会に貢献したいと思っています。将来起こりうる食料問題・休耕農地問題・環境問題の解決を目指します。CSTへの参加を通じて、多様な知識を持つ方々と交流し、ビジネスモデルの構築やプロトタイプの作成、収益計画について勉強できればと思います。

李 哲揆

企業から出た食品コンポストを人工木材にアップサイクルすることで廃棄物削減と資源循環を促進させる事業を行っています。これまで燃やされてきた「生ゴミ」を資源として捉え直すビジネスを成立させ、持続可能な社会の実現に貢献します。

松江 明葉

炭化装置による使用済み紙オムツのリサイクルや、超高齢化社会の次である多死社会を見込んだ、CtoCの訪問介護マッチングサービスに取り組んでいます。持続可能な社会づくり、地域経済と環境保護の新しい循環型システムを創造します。

平田 健夫/合同会社サイクラス

ケアと修理によってモノを大切に使い続けることを軸に、スローで豊かな循環型社会を目指しており、衣類の修理や循環型イベントの運営、サーキュラーエコノミー支援事業を展開しています。CSTを通じて事業の形をより明確にすると共に、企業や産業の枠を超えたコラボレーションに繋げ、自然のサイクルに寄り添う本質的で豊かな循環型社会の一助となることを目指します。

榎本 剛司/静岡県立大学

新たに開発した分析技術を用い、“安全安心”という新たな価値を再生プラスチックに付与します。この取り組みにより、再生プラスチックの価値を高め、マテリアルリサイクルを促進させることで、プラスチック問題の解決を目指しています。このプログラムを通して、他の参加者の皆様やメンターの方々から得られる新たな視点や知識を取り入れ、事業を一気に加速させたいと考えています。

参加者のピッチ後には、会場全体でのネットワーキングが行われました。参加者同士・メンター陣との名刺交換や、各々のビジネスについて議論し合う時間となりました。

それぞれが思いやビジョンを持って臨む「CIRCULAR STARTUP TOKYO」。サーキュラーエコノミーを推進する事業アイデア、そして参加者自身がこれからのプログラムでどう変容していくのか、これからの成長に期待です。