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【イベントレポート】第2期中間デモDayを実施

2025年3月4日

CIRCULAR STARTUP TOKYO」は、サーキュラーエコノミー領域に特化したスタートアップ企業の創業を支援するインキュベーションプログラムです。参加者は、循環型経済に関する多様な講義や専門家からのメンタリング、中間・最終発表などを通して、循環型経済の実現に向けた新たなビジネスモデルの構築や成長を試み、最終的には資金調達や社会的インパクトの創出を目指します。

2025年1月31日には、日建設計の運営する、まちの未来に新しい選択肢をつくる共創プラットフォーム「PYNT」にて、参加者がこれまでの進捗や成果を発表する中間デモDayが実施されました。

本記事では、その一部を抜粋してレポートします。

参加者からのピッチ

参加コースA:スケールアップ&資金調達・IPO準備コース

坪沼 敬広・野田 英恵/合同会社渋谷肥料

坪沼氏と野田氏は、渋谷を「消費の終着点」から「新しい循環の出発点」にシフトできないか?という問いを掲げ、都市から始まるサーキュラーエコノミーのモデルを実装しています。たとえば、渋谷の事業系生ごみを再生した肥料で育ったさつま芋から、循環型6次産業食品モデル「サーキュラースイーツ®」を展開しています。

今後は、このようなお菓子を高価格帯のお土産としてブランディングすることで、経済合理性を担保しながら、新しい文化の創出を目指します。

坪沼 敬広氏

坪沼 敬広氏

荒 裕太・原田 雄司/株式会社Ripples

荒氏と原田氏は、特殊なフィルムを貼りつけたプラスチック容器を開発し、水平リサイクルの推進を目指しています。同社の容器は、食後にフィルムを剝がすときれいな状態になるため、容器をまとめて回収し、容器から容器への水平リサイクルを行うことが可能です。また、プロセスの中で障害者雇用を促進しています。さらに、こども食堂を運営するNPO法人全国こども食堂支援センターむすびえと連携協定の締結も行いました。

荒 裕太氏

荒 裕太氏

鶴崎 祐大・朴 旻/株式会社Seafood

鶴崎氏と朴氏は、テクノロジーを活用して水産業の課題解決に取り組む株式会社Seafoodを運営しています。現在は事業方針について再検討している段階だと話します。

今後のビジネスモデルについては、漁業者が小売店・飲食店へ直接卸せるプラットフォームを用意しつつ、自治体向けのデータ提供や、漁業データから漁場管理を可能にするなど、ビッグデータを活用する方法を探しながら、水産業の復興を目指します。

鶴崎 祐大氏

鶴崎 祐大氏

清水 雅士/マイクロバイオファクトリー株式会社

清水氏は、デニム廃繊維からインジゴ染料を回収し、再度染料として利用する技術開発に取り組んでいます。現在は、国内での技術実装やマーケティングを行っています。リサイクル素材の使用を求める動きが強まっている海外での事業展開を見越しているアパレルブランドなどを顧客として想定しています。

今後は資金調達に向けて、投資家へのより良い事業内容の伝え方を改善していくとのことです。

清水 雅士氏

清水 雅士氏

中村 周太/株式会社Circloop

中村氏は「サステナビリティをあたりまえに」をミッションに、オフィスやコワーキングスペースといった働く空間向けにリユーザブルカップサービスを展開しています。これまでリユーザブル容器の普及のバリアとなっていた、利便性の低さや利用の手間が多いこと、導入の効果が見えないといった課題を、カップの洗浄、配送、回収をフルサービスで行うことや、レポートで環境負荷削減効果を可視化することなどを通して解決するサービスです。

中間デモまでのCSTプログラム期間中にはリユーザブルカップの提供価格に向き合ってきました。今後は、オフィス向けリユーザブルカップでリユースシステムインフラを構築、法制度や消費者意識の変化を捉え、食品容器市場全体のリユースを実現していくとのことです。

中村 周太氏

中村 周太氏

参加コースB:社会インパクト創出&事業基盤構築コース

李 哲揆

李氏は、都市の食品廃棄物に着目し、食品廃棄物をコンポストにしたものを生分解性プラスチックと混合した再生可能な製品を作ろうとしています。生ごみの解決策としてコンポストを作ることがよくあげられますが、都市部でコンポストを作っても、その活用先が限られていることがこれまでの課題でした。そこで、より使いやすく再生的な素材や製品を作ることで、ESG対応を求める企業をターゲットに展開を進めています。

今後は、建材や農業資材などを中心に、ニーズを探りながらプロダクトの出口を決めていきたいとのことです。

李 哲揆氏

李 哲揆氏

榎本 剛司/静岡県立大学

榎本氏は、プラスチック問題に対し、“安全・安心”をテーマにしたサーキュラーエコノミーの構築に挑戦しています。具体的には、化学物質を網羅的に分析することでプラスチック製品の安全性と安心感を高める事業を展開し、消費者の信頼を獲得することで再生プラスチックの利用を促進させるとのことです。ターゲットは、再生プラスチックの利用を拡大している自動車業界です。

今後は、再生プラスチックの価値を「見える化」するビジネスモデルの構築に取り組んでいくとのことです。

榎本 剛司氏

榎本 剛司氏

松江 明葉

松江氏は、事業ごみ(主に使用済み紙オムツ)の炭化リサイクル装置の販売及びメンテナンス事業を行っています。装置は、事業ごみのコスト削減目的として販売する予定でしたが、マイクロ波で炭化ができる装置として特許申請を行っている段階だと言います。今後は販売戦略を見直し、災害廃棄物処理装置としても提供していきたいとしています。

課題は、炭化したものの衛生面や安全面を測定していくことと、燃やす以外の炭の活用方法を模索することです。

松江 明葉氏

松江 明葉氏

長末 雅慎/有限会社GMGコーポレーション

長末氏は、「藻類」を活用し、CO2削減、藻類タンパク質の利用、堆肥化を通じた循環型農業の実現、藻類オイルを使った化粧品原料の開発などを行う「MoRack.」を推進しています。今後は、藻類プレーヤーとの協業を通じて、既存技術を活用した製品販売などを図るため、人的リソースや資金調達を行っていくとのことです。

メンターからは、「最もソーシャルインパクトが大きい領域から切り込んでいくと良いのでは」というコメントがありました。

長末 雅慎氏

長末 雅慎氏

須藤 簡子/ブルーバード

須藤氏は、吃音当事者の“働きたい”を叶える「インクルーシブ型」家事代行マッチングサービスを構築しようとしています。サービスの中では、吃音症に対する社会の無理解を乗り越えるため、プラットフォーム上で、一人ひとりに合わせた合理的配慮を明記し、就労事例をデータベース化する予定です。今後は、サービスの実証実験を行っていくとのことです。

メンターからは、「価格ではなく独自の提供価値をアピールすべき」とのアドバイスがありました。

須藤 簡子氏

須藤 簡子氏

八神 実優/株式会社Gaiapost

八神氏は、生分解性の幼児用オムツを開発し、使用済みのオムツを堆肥化し、畑の土にして野菜や果物を育てる事業に取り組んでいます。プロダクトは、布製のカバーに生分解性のシートを敷いたもので、すでに自宅のコンポストで実証実験も行っています。これまでに、オムツユーザーの親への追加ヒアリング、海外の堆肥化可能なオムツの調査などを行っています。今後は、堆肥化やオムツ形状のブラッシュアップが必要とのことです。

メンターからは、「オムツで作ったコンポストを子どもたちの教育に用いていくなど、活用方法を考えられると良いのでは」というアドバイスがありました。

八神 実優氏

八神 実優氏

王 振江/株式会社東芝

王氏は、AIの力で粗大ごみのリユースを促進するプラットフォームを構築しようとしています。具体的には、粗大ごみのうち1~2割はリユースが可能であるものの実際のリユース率は0.3%未満である一方、現在のリユース選別オペレーションでは工数が足りず、粗大ゴミがリユース可能かを判断するリソースが割けない課題に着目し、AIで粗大ごみがリユース可能かどうかを判別するツールの開発を行っています。

今後はリユース業者や自治体の訪問を通してビジネスモデルをブラッシュアップし、AIの実現可能性も確認するとのことです。

王 振江氏

王 振江氏

平田 健夫/合同会社サイクラス

平田氏は、アパレル企業に向けて、企業へ責任あるビジネスへの移行を促す他、人の気持ちやつながりを起点とした地域の小さな循環を作ることなどを通して、最終的には社会全体に対して「修理することがかっこいい」という文化を作っていこうとしています。

具体的には、ブランド公式のリペアやリセールサービスを展開できるサーキュラービジネスのプラットフォームを提供し、サイクラスがプログラム運用のアウトソースを担うことによって、環境、社会、経済効果を可視化していきたいとのことです。また、地域ではリペアカフェの実施や服のリペアやリユースの地域内循環を目指した活動を行っていきたいとのことです。

今後は、これらを実現するための具体的なビジネスモデルを詰めていきたいとのことです。

平田 健夫氏

平田 健夫氏

守田 篤史・和田 由里子/株式会社ペーパーパレード

守田氏と和田氏は、まち由来の素材を循環させる「都市型サーキュラー」に取り組んでいます。例えば、屋外広告は素材としての耐久性に優れ再生の可能性があるにも関わらず、知的財産権の問題によってそのほとんどが廃棄されてきました。そこで、知財を隠すシークレット地紋を施すことで権利の問題を解決し、アップサイクルなどを通じて循環させるプロジェクトを運営しています。

今後もデザイン性の高いアップサイクル製品を生み出し、新たな需要を創出していきます。また、同社のデザインの力を活用したいと考えているパートナーを募集していくとのことです。

守田 篤史氏

守田 篤史氏

PYNTとは?

今回中間デモDayが行われた「PYNT」は、日建設計の東京本社オフィスの3階にある、組織や立場を超えた出会いを通じてコラボレーションを加速させ「共創」をつくること、社員の「やりたい」を支援し、コミュニケーションを活性化することを目的にオープンした施設です。まちの暮らしに関する様々な課題意識をもつ個人と建築や都市の専門家を繋ぎ、「まちの未来に新しい選択肢をつくる共創のプラットフォーム」として、社内だけでなく、企業や大学、行政、NPOといった社外の共創パートナーも巻き込み、マッチングから社会実装までを支援することで、複雑な社会課題の解決を目指しています。

まとめ

各参加者のピッチの後には、メンターやアドバイザーからの鋭いコメントや質問があり、事業内容や計画について参加者がさらに深く考えるきっかけが与えられていました。CIRCULAR STARTUP TOKYO第2期の最終デモDayは、2025年3月7日13:00〜17:00、虎ノ門ヒルズ森タワーにて開催されます。

参加者のさらなる成長に期待です!